民主主義プロセスの教育可能性――『民主教育論』のこと

大学院の授業で、エイミー・ガットマン(神山正弘 訳)『民主教育論』(2004 同時代社)を読んだ。授業を一緒に受けた人が万が一このブログを見たら身元が割れてしまうかもな、と思ったが、おもしろかったのでやっぱり紹介することにした。

 

民主教育論―民主主義社会における教育と政治

民主教育論―民主主義社会における教育と政治

 

 

ガットマンはアメリカの政治哲学者だ。彼女は1980年代に平等主義的リベラリズムを批判的に見つめ直し、それを民主主義的教育理論へと展開した。この理論では政治参加の能力という視点が鍵になっている。ガットマンは「民主主義教の教祖」みたいな人で、この本の中ではひたすら民主主義やれ、と言っている。民主主義しっかりやってれば失敗も許される!みたいなことも言ってた。でもそれらは説得力を持っていたし、保守的な部分とリベラルな部分が組み合わされたバランスのいい論になっていた。

 

私は教員を目指しているが、この本の内容は自分の中の一つの軸になった。「教育は何を目指すのか?」「教育権力はどのように共有されるのがよいか?」「教育における原則は何か?」といった根源的な問いに対してガットマンは明快に答えている。教員(校種問わず)はじめ教育に関わる人は、きっと読んで損のない本だと思う。色んな人に手に取ってほしい。

 

……が、いかんせん読みにくい本である。「もうちょっと簡潔に分かりやすくお願いできませんかね~」と内心何度も思った。そこで、最近出たガットマンの研究書を挙げておく。

 

 

 

こちらの本は比較的入手しやすく、『民主教育論』の内容もかなり分かりやすく整理されている(私は一部を読んだだけだが)。『民主教育論』は読み通そうとすると時間と根気と労力がそれなりに必要だが、こっちなら多忙な方でもいけるのではないか。興味があれば、ぜひ。

 

ちなみに『民主教育論』を扱った授業の課題は、この本を5000~20000字でまとめよ、というものだった。特に構成とか考えずに前からまとめていった結果軽く25000字まで膨らんでしまい削るのに苦労したが、なんとか20000字以内に収まった(締め切り当日)。そのレポートが、『民主教育論』の内容をざっと見ていくのに便利なものなのではないかと思うので、次のブログに乗せておく。ただの院生のレポートなので拙い文章かもしれないが、こちらもよろしければ。